私は、厚労相を務める柳澤伯夫氏に対して、彼個人が悪い人であるという認識は全くありません。大臣を務めるくらいだから、きっと優秀な方で、仕事でも家庭でもしっかりした役割を担ってきた、偉い、立派なオジサンなのだと思います。
でも、今、厚労相を務める人材としては不適格だと思うのです。
「産む機会」発言も、思うに彼なりのユーモアのつもりだったのではないでしょうか。でも言ってはいけなかった。
今も「2人以上の子どもを持つことが健全だ」などと言ったことが揚げ足を取られるように議論されてしまってます。それも悪気があって言ったわけではないのですよね。何とか前の失言をフォローしようとして努力した発言だったことは、よくわかります。彼の振る舞いを見ていると、何だか気の毒になってしまいます。
でも、「健全」発言もやっぱり「大臣として言ってはいけないこと」だったのではないでしょうか。
思うに、彼のセンスというか考え方は、特に女性問題と育児問題について、時流に即していない気がします。それは彼だけにとどまらず、いわゆる議員さんのほとんどの方は、同じようなものではないかと想像します。
今日、イオンのCMを見ました。子どもを入学式に連れて行くお母さんが、街角の店先にある大きな窓ガラスに映る自分の姿をみて「私たちもまだ、結構イケてるよね」と、というもの。
(投稿時現在、Singing AEONというサイトでフラッシュ映像を観ることができます。)
昔はこんなCMはなかった。入学式と言えば子どもが主人公に決まってました。それが、母親が主人公のCMが流されるなんて。
柳沢厚労相は、このCMを見たらどう思うのだろうか?
というか、中高年の方々がこのCMを見たら「自分のことよりも育児と家庭に気を配りなさい、家をしっかり守りなさい、はしたない」などと叱責してしまう方もいるのではないでしょうか(勝手な想像)。
いや…違うんですよね。お母さんだって、女として、人間として自立して生き生きと過ごしていきたいのです。家庭に収まるだけではなく、自分固有の存在価値を見いだしつつ、生きがいを持って暮らしていきたいというのが、今の30歳代の考え方だと思います。
そして夫も、それを支持するというスタイル。それが良い悪いではなく、そういう時流になっているということです。「けしからん」などというのは余計なお世話で、元はと言えば公共広告機構(AC)で「子育てしない男を父親とは言わない」なんて、TRFのSAM(安室奈美恵の元夫)を起用してCMで流したキャンペーンがこの時流の走りだと思います(ACって国が流してるんでしょ)。
それと…結婚する夫婦にアンケートをとったら「子どもは2人以上がいい」という回答が多数寄せられたそうですが。いや、ウチら実際に子どもができる前はそう答えてたと思いますよ。でも現実は「2人でストップ」でした。確かに「以上」に含まれるのではありますが、もしかしたら1人だけだったかもしれない。「1人でじゅうぶん」という夫婦の意見だって、理解できる。
子どもが生まれるまでは「3人でも、4人でも、多い方がいいよね、ダーリン」なんていっていた女性も、1人を産んでみたら「こんなに苦しくて痛くて、金がかかって、大変な思いはもうコリゴリ(あるいは『あと1回が限界』)」となってしまうのがパターンとしては多いのではないかと思います。
何しろ今の私たち30歳代の世代は、ゆとり教育の中をスルスルと生きてきて、バブルの時期に楽しい思いをして、我慢することが苦手な人間で充ちあふれかえっているのですから(私も含めて自虐的に言えば)!
そして20歳代も、似たようなものではないかと思います。
厚労相は、わかっていない。アンケートとか数値とか、そんなものに頼るのではなくて、実際に子どもを産んで育てている私たちと直[じか]に触れあって、現実をよく知って欲しい。現実を理解できる人に、厚労相を務めて欲しい。
育児の問題だけが厚労相の仕事ではないにしても、国を司る機関の代表者として柳沢氏は適任ではないと思います。
でも、柳沢氏は悪い人ではないと思う。というか、きっといい人だ。厚労相を今務めるべき人材ではなかっただけのことだ。攻撃されている彼を見ているとむしろ気の毒に思う。
彼が悪いのではなくて、彼を厚労相にした阿部首相がいけないのかもしれない。あるいは阿部首相を操っている黒幕がいけないのか(そんな人がいるのかどうかは知りません)?
あと思うのは、育児問題の現実を国の代表者に知らしめるようなNPO機関があって、それを主導する強力なブレインが国を動かそうとしてくれたりしたら、かなりいい感じじゃないかな…と考えたりします。
うちもあと1人子どもがいたらいいな、と思うことは多々あります(自分がこんなに子ども好きになるとは、子どもができるまでは思いも寄りませんでした)。でもそれを言うと妻から「じゃあ次はあなたが産んでね!」と言われてしまいます。いや、それは無理だ。
それに今の末娘、さくらみたいにワガママに育ってしまったら、どうしようという心配もあるのですが…ワガママになった原因が私にあるのは「間違いなし」だったりします。